【1月9日】情勢解説

(1)米中貿易戦争の本質は、戦後的な「帝国主義対スターリン主義」の延長ではない

貿易戦争(関税戦争をテコとする)の展開について、とりわけ対中国の貿易戦争の展開についてどうとらえるか。
まず、帝国主義論的にとらえて、没落した米――しかし依然としてまだ圧倒的な経済的・軍事的実力を保持している米帝国主義が、その実力・軍事力をむきだしにして戦後世界体制的あり方をみずから蹴破って、世界(と世界経済)を再編・再分割するために実力行使に出たものとしてとらえるべきだ。

ここで留意すべきことは、この米の対中国スタ政策はかつての対ソ連スタ戦略と同一に論じられてはならないということである。

新自由主義の成立・発展は、ソ連スタの崩壊だけでなく、中国スタの「改革開放」につけ入り、取り込んでグローバリズムを展開してきた。戦後的労働者支配・ケインズ主義的経済政策からの単なる転換ではなく、東欧の資本主義化も含め現実の市場の拡大ともセットになって新自由主義は確立していった。ここで「改革開放」下の中国スタへの投資の流れは圧倒的であり、またたく間に中国を「世界の工場」に変貌させたのである。それは中国のWTO加入によってさらに進行し、中国の経済的膨張はついに世界第2のGDP大国へとおしあげるものとなった。
この過程で中国スタは、アメリカの「FAANG」を象徴とするIT巨大産業の形成と連動しつつ、「華為」(ファーウェイ)を先頭にIT産業の一定の大企業群をつくりあげたのである。これはまた、スターリニスト支配体制強化の武器としてもIT化・AI化政策が推進されている。

「中国製造2025」は、こうした今日的な中国的力量をテコにまさにスタ体制の再編・強化と一体で中国を世界的強国へとおしあげていくものとしてある。
もちろん米帝の力量は、まだ中国を上回っている。しかし中国はたやすく圧倒して追い込めるというものでもない。今日の米帝トランプの対中国貿易戦争が、侵略的・戦争的な「経済政策」であることのゆえんだ。

これは帝国主義の不均等発展の法則の典型的なプロセスだ。米中貿易戦争は、世界史が新たな帝国主義的再分割戦の時代としてあると見るべきだ。

結論として。米帝の対中貿易戦争はもはや平時のものではなく、中国スタ体制の転覆を含む戦争的・侵略的本質を持っている。

新たな「鉄のカーテン演説」(18年10月)をするペンス米副大統領

これにともなう、重要な点をいくつか。

①貿易戦争は、世界第1位と第2位の経済大国の争闘戦として、世界経済への大打撃を与える。08年からの世界大恐慌の進行・深化を促進する。

②中国市場の大きさから、世界の帝国主義諸国がそれぞれ中国との一定の連携をもって米の「自国第一主義」圧力に対抗するだろう。中国をめぐるかたちで諸帝国主義の独自のブロック化政策が現実化する道となる。
たとえば、ドイツは米の今日の対中政策に基本的に同調していない。イギリスや日本も対米協調一辺倒ではすまないだろう。一定の裏の政治が進行しているとみるべきだ。

日米を中心とした「ADB(アジア開発銀行)」を軸とした「インド・太平洋戦略」と、中国を中心とした「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」を軸とした「一帯一路構想」の激突は、このような情勢を示す勢力図を描いている。すでにAIIBのほうが加盟国・加盟地域が多く、G20でAIIBに公式に参加していないのはもはや日米だけだ。

③29年恐慌時と違って、米帝にとってかわる基軸国もないなかでの争闘戦の激化、軍事的対立の激化はまさに泥沼へ向かう。第二次大戦時は、米が事実上の基軸帝国主義となるなかで英帝は組みこまれる道を選択していき、戦争は圧倒的な超大国として米帝を生み出し、世界政治の「軸」を形成した。今回はそれがなく、第一次大戦的な泥沼となっていく。

 

(2)日本帝国主義の戦争国家化への衝動はますます深まる

こうした内外の大情勢のもとで、日帝・安倍政権にとって敗戦帝国主義の制約的現実、とりわけ憲法第9条の制約は決定的な枷だ。今日の日帝・安倍政権の改憲攻撃の目標は世界戦争への日米同盟下の戦争主体としておどりでることである。

つまり改憲=戦争開始という攻撃としてあるということ。改憲後に戦争国家体制がつくられて戦争過程へ、というのではなく、改憲と戦争参戦として同時進行する形になるだろう。

 

(3)大恐慌情勢の現況について

「アップル・ショック」が新年冒頭から世界を覆っている。

1.2に米アップルが、18年10~12月期の売上高予想を1割近く大幅下方修正。NY株式市場につづき、1月2日にアジアの主要株価指数も軒並み下落、中国の上海総合指数は、昨年末終値より1.1%安の約4年1ヶ月ぶりの安値となった。欧州もほぼ全面安だ。
そもそも米中貿易戦争は、米の最先端のみならず、全世界を席巻しているIT・ハイテク産業に波及してきた。すでにダウ平均は、IT株を主因として昨年10月以来約4000㌦下落してきた。「アップル・ショック」は象徴にすぎないのだ。
12月末の中国の景況感(製造業購買担当者指数)は悪化。実質経済成長率の低水準という形で中国経済の減速は示され、世界経済をゆさぶるだろう。ついに中国は、預金準備率ひき下げの金融緩和にふみきり、バブル政策による累積赤字―政府・民間債務はGDP比261%!―を放置せざるをえなくなった。
それでも米は、ライトハイザー通商代表がトランプに「中国の譲歩を引き出すには追加の高関税が必要」と進言しているとおり、米中貿易戦争を継続せざるをえない。「自由貿易」では勝てないからやっているのだから。
他方で、米政府の一部閉鎖問題など国内危機は激化している。トランプは排外主義に頼らざるをえないが、「国境の壁」予算をめぐり、議会の賛成がなければ「政府機関の閉鎖」を「数年でも続ける」とまで言っている。

日本では1.4東京株式市場「大発会」から下げ幅が一時700円超。自動車などの輸出関連、IT関連の下落などで2万円を割る事態となった。
「アベノミクス」のペテンとウソにまみれたバブルは、もはや崩壊が見えている。とくに海外勢の日本株の売り越し額は、31年ぶりの高水準(5.6兆円)。海外投資家は「アベノミクス相場」を見限っている。

では誰が株を買っているのか。国内の個人でも金融機関でもなく、日銀である。上場投資信託(ETF)を通じた日本株の買い入れ額は、実に計6.5兆円。昨年末12月はETF・715億円買い入れでやっと2万円を保ったが、年初からの下落はとめられなかった。日銀はETFの損益分岐点(1万8434円)がせまり、逆に含み損をかかえ破局の段階に入ろうとしている。GPIF(年金積立金管理運用ば独立行政法人)の株価買い支えにも破綻は連動するだろう。
昨年は、世界の株式総額は、85兆ドルから67兆ドルと約2割減。通常は株式と逆に動く債券も下落し、原油などの商品や不動産投資信託(REIT)からさえ資金が流出した。膨れあがった資産が急落し、世界はほとんど金融恐慌と同じ実態となっている。3月の米中貿易戦争の再開は、人為的な株の引き上げにこだわってきた日帝を何よりも追い込むことになる。

 

(4)日帝の改憲・戦争のための排外主義・愛国主義キャンペーンの高まり

もはや「経済」での人気とりが叶わない安倍政権は、中・北朝鮮とともに韓国に対する排外主義・愛国主義のキャンペーンを、メディアをも総動員して展開している。12.20韓国海軍の自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射事件は、日帝・安倍による朝鮮半島への侵略と侵略戦争への策動がもたらしたものだ。このことについていくつか。

①自衛隊は、この火器官制レーダー照射を戦闘行為と断言している。だが、「火器管制用のレーダーの照射を受けても相手の艦がミサイル発射機に装填していない……全く危険でない……」と軍関係者からも出ているなかで、日帝は事態を排外主義・愛国主義による危機突破に利用しようとしている。

②安倍本人が、「証拠」映像公開の直接指示をくだし、戦争挑発の先頭にたっている。そもそも自衛隊自身すら飛び越えて事態が推移している。戦前から日帝の侵略戦争の口実の「実常手段」だ。

③日本は米中関係の戦争的激化のもとで、東アジア全域、とりわけ朝鮮半島から中国への「列島線防衛」と称した軍事展開を、米帝とともにかつてない規模と頻度でおこない、この海域の緊張を高めてきた。

百歩ゆずっても、このただなかで、韓国・駆逐艦に対して、海自・哨戒機が低空飛行など、なんらかの「接近」をおこなったのは事実である。日米安保のもととはいえ、日帝独自の朝鮮半島への侵略的な臨戦態勢のなかで勃発している。

④「徴用工」判決に対して、日本政府が宗主国然とした恫喝・開き直りをしており、それへの反発も当然韓国側の背景としてあるだろう。

⑤実際に日本は大軍拡に突き進んでいる。日本はいまや「敵基地攻撃能力」獲得を目標として「いずも型」護衛艦の「空母」への改修、最新鋭のステルス戦闘機F35を105機購入(全体で147機体制)、射程900キロの巡航ミサイルを保持等々・・・。米軍が沖縄で、初の地上から艦隊を攻撃するミサイル訓練を19年中におこない、さらに自衛隊との共同訓練も行おうとしている。

⑥この事態に、メディアや政治勢力は屈服か沈黙している。われわれは断固として、日帝・安倍の侵略への挑発を弾劾し、排外主義・愛国主義にたちむかい、「国際連帯」と「自国帝国主義打倒」を掲げて改憲・戦争阻止へ進もう。

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