「再びの世界戦争阻止しよう!」(東京大学支部『決戦』)

再びの世界戦争阻止しよう!

戦争の惨禍を繰り返すな! レーニン『帝国主義論』を読もう

 

リーマンショックから11年、世界中の国家体制が再び経済危機に恐怖し、貿易戦争が始まり、同時に軍事的緊張も高まる今こそレーニンの『帝国主義論』を学ぼう。『帝国主義論』は第一次大戦中に執筆され、大戦の経済的背景を解明した。レーニンは、全世界的な恐慌と世界戦争は資本主義の不可避的な帰結であると論じた。また、第一次大戦への動員を拒否し、戦争を遂行する自国政府の打倒を呼び掛け、全世界で資本家階級が支配する政府に代わる労働者による国家権力の樹立(プロレタリア世界革命)を訴えた。レーニンに学び、世界戦争を阻止しよう。資本主義世界体制を終わらせよう。

 

世界を揺るがす米中貿易戦争

アメリカの関税引き上げ政策が全世界を震撼させ、双方の関税引き上げの応酬をもたらしている。中でも世界第1位・第2位のGDPを持つ米中の貿易戦争は、世界の貿易と経済に打撃を与えている。2019年9月に開始された制裁第4弾が12月に全面発動されれば、ほぼ全製品に制裁関税がかけられることになる。製造業の衰退と中間層の没落、社会の崩壊という危機を背景に登場したトランプ米大統領の狙いは、「製造業の復活」にある。”Make America Great Again”という標語は、その狙いを端的に表している。しかし、工場の海外移転で製造業の根幹をすでに失っているアメリカは、中国を筆頭にアジアを拠点とする生産体制に割って入ることも出来ず、貿易戦争は終結の兆しも見えない。

アメリカが関税戦争を仕掛けているのは中国に限らず、EU、日本といった西側の大規模な貿易相手国も含まれる。もし、GDP第1位のアメリカとの貿易が滞れば、世界経済への打撃は甚大なものとなる。WTO脱退をも示唆しながら、戦後アメリカが中心に築いてきた自由主義貿易体制から保護主義に転換を図るトランプ政権は、戦後体制と国際分業体制を破壊してでも世界経済における自国第一の座を守ろうとしている。

しかし、自国第一主義はアメリカに限った話ではない。世界的な潮流として登場している。イギリスのボリス・ジョンソン政権やフランスのルペン、ドイツでのAfDの台頭、東欧の右派政権の伸長といった動き、そして中国の国際的な勢力圏確立を目指す「一帯一路」構想も自国第一主義の潮流にあると見ることができよう。このことが示しているのは、リーマンショックから11年を経て、再び世界経済が危機に陥り、世界の資本主義体制は自国の利益・勢力圏のためなら今までの国際秩序も顧みなくなったということだ。第一次大戦、第二次大戦前夜を彷彿とさせる世界情勢に突入しつつある。

 

資本主義と戦争 -レーニン『帝国主義論』の教訓-

このような時こそ、私たちは過去の歴史から学ばなければならない。中でも、レーニンの『帝国主義論』は、重要な視点を与えてくれる。レーニンは、第一次大戦の最中である1916年に亡命先のスイスで『帝国主義論』を執筆した。その内容の核心は、20世紀の資本主義は19世紀までの資本主義とは性格を異にするものであり、それゆえ恐慌と戦争が世界規模のものとして現れるようになったということだ。

1820年代から60年代にかけて、イギリスを中心に約10年周期で好況→恐慌→不況→好況…を繰り返す周期的景気循環が見られた。好況期には資本が蓄積するのに伴い、生産拡大を図り、雇用が拡大していく。その結果、一方では賃金の上昇、他方では利潤率の低下が起こるが、個々の産業資本は銀行から融資を受けて更に拡大していく。ただし、好況期の過熱した拡張と蓄積も、利子率の上昇と利潤率の低下に伴い、いつかは限界を迎える。この時、銀行は貸付資金が回収不能に、資本は支払不能となり、倒産が始まる。労働者は次々と失職していく。これが恐慌である。恐慌後の不況では、資本が新たな工場・機械といった生産手段を導入し、  求職者を雇用しながら利潤を生み出し、資本の蓄積をもたらす。そして、再び好況に向かっていく。これが19世紀の周期恐慌のサイクルである。

しかし1873年の恐慌以降、「世紀末大不況」と呼ばれる長期の不況に入る。同時期に、工業の主力は繊維業から重化学工業に移った。従来の工場制手工業を行っていた小規模な事業所に代わって、大規模な工場や交通手段といった固定資本が増大した。大企業化と中小企業の淘汰が進むと、カルテルによる独占が生じる。それ以前の自由競争の段階から財閥による独占体に市場が分割された帝国主義の段階に移行したということだ。

また、固定資本の増大は、金融資本による支配、すなわち金融寡頭制ももたらした。自由競争によって資本主義が機能した段階(自由主義段階 )では商品輸出に代わって、帝国主義段階では資本輸出が主流となる。自国内での生産・売買だけでは利潤を増やせない過剰資本は他の資本が少なく、地価、賃金、原料が安く自国よりも多い利潤(超過利潤) を得やすい国外市場に活路を見出す。

世界経済において中心的な影響力を持つ国(基軸国)は過剰資本、過剰生産力が蓄積する中で独占的な影響力を及ぼしうる市場圏を世界的に拡大することで活路を見出すが、各帝国主義が生死をかけて市場を分割する中で世界経済は分裂し、基軸国が没落すれば世界的に過剰資本状態が深刻化する。かくして1929年の世界恐慌は帝国主義の体制内的に解決しえない危機として現れた。

また、勢力圏を持たずに成長する後発の帝国主義国は利潤を生み出し続けるために勢力圏の拡大を求め、かつて力を持ちながら没落した勢力圏を多く持つ先発の帝国主義と対立する。1914年には、新たに台頭したドイツがイギリスに対し植民地と勢力範囲の再分割を図る争奪戦に発展した—第一次大戦である。

1930年台のアメリカでは、保護貿易体制が築かれた。1929年の世界恐慌後、生き残りに躍起となった帝国主義各国は、英米を先頭に金本位制から離脱し、「輸出競争力の強化」を狙った通貨安競争へと突き進んだ。同時にフーバー米大統領は「国内産業を守る」と称し、輸入関税を大幅に引き上げる「スムート・ホーリー法」の成立を強行した(30年)。世界は高関税競争に突入、大恐慌・大不況は本格的に激化し、世界経済は収縮と分裂・ブロック化を深めた。 

そして、29年世界恐慌と30年代不況の中で、各国が生き残りをかけて勢力圏を分捕り合ったのが第二次大戦である。帝国主義間の勢力圏の奪い合いは戦争によってのみ突破される。その道を拒否するためには自国政府を打倒し、生産手段を持たない労働者階級の国際的な連帯によって世界革命につなげるより他ないーこれがレーニン『帝国主義論』の教訓であり、また、20世紀以降の帝国主義侵略戦争の教訓である。

 

経済危機に恐怖し軍拡進める日本政府を倒そう 

アメリカのサブプライムローン問題に端を発するリーマンショックから11年。リーマンショック以来、米欧日の中央銀行が恐慌対策として金融緩和、超低金利政策をとり、市場に金を流す政策を取っている。この状況下で世界の債務残高が膨張(2019年12月現在250兆ドル、世界GDPの約3倍、リーマンショック前の1.4倍)し、その金は株、不動産、債券に流れている 。過剰債務と金融バブルの危機は解決されることなく、ますます巨大化している。しかし、資本とそれに連なる国家体制が生き残るためにはもはや金融緩和、超低金利を続け、そして自国第一主義、すなわち他国との潰し合いをするしかない段階にまで来ている。 

日本は1990年代から海外派兵への参加、第5世代戦闘機の配備、いずもの空母化、南西諸島への基地増設、イージス・アショア、サイバー軍新設といった軍拡を進めてきた。敵基地攻撃能力の所持すら打ち出しはじめている。今年には、米・イランの緊張関係に乗じた自衛隊派兵も行われる。さらに、軍拡・戦争への制約を取り払おうと改憲が企まれている。改憲は自民党の結党以来の党是であったが、これは同時に経団連が『わが国の基本問題を考える〜これからの日本を展望して〜』で述べているように、まさしく経団連の要請でさえある。

つまり、日本は軍事力を公然に保有・行使して市場的勢力圏を確保することで、資本主義国家としての生き残りを図っている。レーニンが『帝国主義論』で指摘したことが、現在の日本にも当てはまる。

だが、戦争という資本主義国家の延命策に希望はない。二度の世界大戦の悲劇がそのことをよく示している。戦争になれば、全人民、全生産力が日本資本の延命のために労働者階級が服従させることを国家権力によって強制される。たとえ建前でも掲げられてきた戦後憲法に規定された諸権利は破壊され、社会の全部門において重労働を強制される。今こそレーニン『帝国主義論』を読み、レーニンの闘いに学ぼう。

資本主義国家たる日本の現体制がもはや体制を維持できないというのなら、労働者人民こそが権力を取るべき時だ、革命的共産主義者同盟全国委員会・マルクス主義学生同盟中核派とともに労働者人民こそが主人公となる新世界を作ろう。 ■

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