【12月24日】情勢解説

(1)帝国主義の争闘戦は、経済収縮を招きながら破産へ向かっている

トランプの米中貿易戦争は、中国・習近平スターリン主義体制の転覆を目的とする段階となっている。「ハイテク覇権」をめぐる攻防はファーウェイ副社長の逮捕が象徴であるように、ますます激しくなる。アメリカは中国の「国家情報法」による米の技術、特に軍事技術を「盗み取っている」ことを問題にして軍事制裁的に対応している。両国ともに単なる経済競争の次元をこえて国家権力を正面から展開して応酬し合っている。

※ゴーンの再逮捕・勾留延長にもみられるように、このような応酬は米中だけのものでもなくなっている。帝国主義・大国間の争闘戦が次の段階に入っている。

重要なのは、これらむきだしの争闘戦が世界大恐慌を激化させようとしていることである。過剰資本状態下、厳しい利益の確保をめぐる潰しあいの争闘戦から生まれる貿易戦争が世界経済を収縮させ、いっそうの危機を生む構造になっている。

そして世界景気、米経済の「減速懸念」が拡大しているなか、米FRBは12月19日に3ヶ月ぶりの利上げを決定した。これで利上げを打ち止めにするか否かで混迷している。景気減速、株価暴落のリスクを引き受けてでもバブル化をとめなければ巨大な危機を招く。ギリギリの危機に米帝はある。

米ダウ工業株30種は、利上げ後ただちに1年1ヶ月ぶりの安値。12.21まで3日連続の大幅下落となった。1週間のダウ下落幅は1600ドル超とリーマン直後の08年10月以来の大きさとなった。こうした株価下落は、全世界的にハイテク・金融株の失速に顕著となっている。中国などアジア株は金融・ハイテク部門で18年は時価総額で約140兆円分が減った。

米・トランプ政権は、この状況でFRBパウエル長官の解任すら策動しているという。また、米連邦政府の暫定予算が12月21日に失効したため米政府機関の一部が閉鎖された。メキシコ国境の「壁」建設などの予算の強行が引き起こしたものでもあり、米の排外主義・経済の軍事化・経済の崩壊は1セットでますます矛盾を深めていく。

 

(2)日帝の経済政策は破産し、改憲=軍事優先の社会へ安倍政権は突進する

上記の米の株価下落を受け、日本でも日経平均株価はついに2万円を割り込む事態となった。

成長戦略におけるインフラ輸出の要・原発輸出計画は全滅した。イギリス、トルコ、リトアニア、ベトナム、台湾、ヨルダン、アラブ首長国連邦、ことごとく破産・失敗。日本政府が2兆円をこえる税金投入すらもくろんでいたにもかかわらず、ついに最後の場となったイギリスでも破産は見えた。「難しい。もう限界だ」(経団連・中西会長)。

安倍首相の各国を回った「トップセールス」は完全な失敗である。「重要なベースロード電源」として位置づけてきた原発政策は破綻のふちにある。11月末の茨城県議選では電力総連出身候補が敗北し、東海第二原発反対派が大勝したのだ。

12月15~16日のマスコミの一斉世論調査では、安倍不支持が全マスコミ上昇、共同通信・毎日・朝日では不支持が支持を上回った。この間の重要政策では、難民入管法ー73%反対、水道民営化ー55%反対、辺野古土砂投入は反対60%・対話不十分76%。この情勢は通常国会に持ち込まれる。

安倍は、臨時国会閉会直後には異例の記者会見を開いて「2020年は新しい憲法が施行される年にしたい」と述べた。自民党の19年2月の党大会へ向けた運動方針原案で「改憲に道筋をつける覚悟」を明記し、19年を「政治決戦の年」と位置づけた。政府与党も「決戦」を訴えているのである。

 

(3)自衛隊の侵略軍隊化がはっきりと進んでいる

12月18日、「防衛大綱」「中期防衛力整備計画」が閣議決定された。「従来の延長ではない大胆な見直し」と打ち出し、現行の中期防から2兆8000億円多い、5年で27兆4000億円の投入を決定。

「いずも」型護衛艦の「空母化」は事実となり、最新鋭ステルス戦闘機F35を105機購入(すでに決めていた42機も含まれるので計147機となる)。F35は、1機あたりF35Aで100億円、F35Bは150億円と米史上最も高額な戦闘機であり、メンテナンスなどの高額さも含めて「金食い虫」と呼ばれる。しかも稼動確率はなんと50%という欠陥機で9月に墜落事故を起こしている。国内で動かせるパイロットはわずか3~5人といわれ、こんなに買う必要はブルジョア的にも意味不明である。経済交渉などのための米帝への「献金」としか思えない。もちろんその中身は労働者人民の税金であり、許しがたいことだ。

憲法9条との関係で見れば、攻撃型空母やステルス戦闘機などは完全に「自衛」を踏み越えている。

自衛隊については「人的基盤の強化」を明記し、採用年齢の引き上げなど隊員確保に重点が置かれている。志願者の急激な減少がとまらないからだ。労働者人民は決してこの国を守ることに積極的ではないということだ。

自民党の改憲案で新設する「9条の2」をもって「必要な自衛の措置をとる・・・そのための実力組織」の保持・維持のための転換はすでに、改憲の先取りとして始まっている。

※この状況のなか、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のPⅠ哨戒機に「火気管制レーダー」を数分にわたって照射したという事件が起きた。これは「ロックオン」であり武器使用に準ずる行為だ。不可解なことが起きているといわざるをえないが、問題は、日帝がこれを「徴用工」「慰安婦」問題と結びつけて対韓国の道具にしようと動いていることだ。東アジアにおける米日韓の帝国主義的連携を、米中貿易戦争の軍事対立への昇華が進むなかで積極的に壊しにいくこの動きは極めて自滅的であり、しかしそこまでして排外主義を煽る以外に日本帝国主義は立ち行かないのだ。

(4)世界的反乱はさらに続発する

仏「黄色いベスト」運動は、12月22日で6週間連続となった。さらに欧州全土に同様の動きが拡大している。ハンガリーでは労働法制改悪を「奴隷法」だと弾劾して大規模デモがまきおこっている。

この間、『国際労働運動』で出してきたように、韓国、アメリカ、EU、中国、世界中で反撃は始まっている。日本においても必ずそのときはくる。

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