【1月15日】情勢解説
(1)恐慌の深化が、ブロック化につながる外交関係の動揺を起こしている
19年冒頭には、米巨大IT企業群GAFA(ガーファ)の一角であるアップルの売上げ下方修正が「アップル・ドミノ」をひきおこし、米、日本、アジア、欧州の世界同時株安をひきおこしている。
それは中国市場の大きさが背景となり、諸帝国主義の独自のブロック化政策が現実化する過程となろうとしている。そしてブロック化の進展がさらに世界経済を破滅に追い込む。
この間、世銀は2019年世界経済全体の成長率を2.9%とへと下方修正した。
中国の12月の製造業購買担当者指数は、好不況の分岐点の割り込みとなった。米の12月の製造業景況感指数も、リーマン金融恐慌以来、約2年ぶり低水準となった。18年は株価が激しく変動しても、為替相場は大きく動かなかったが、今回は連動している。バブル的な株価の浮沈で、大きくは投資家・金融機関同士が殴りあっている状況ではなくなっているということだ。特に、米が日帝に対し、1~2月の新たな貿易協定に通貨安誘導を禁じる為替条項を盛り込んだら、円高に歯止めがかからなくなり、日帝経済は大打撃を受けることになるだろう。
年末・年頭の大暴落に対して、米FRBのパウエル議長は1.4に「景気減速の兆候があれば、利上げペースによる金融引き締め路線を見直す」可能性を示した。これを受けて、ニューヨーク・ダウ工業株平均は急反発している。
パウエルは、米中貿易戦争と中国の減速がもたらす長期大不況にふるえあがっている。世界経済の過剰資本・過剰生産力が基調としてあるかぎり、金融政策は新たな矛盾をつくりだす他はない。「恐慌対策」が国家債務の爆発的上昇を世界中で招いたように。
29年恐慌時と違って、米帝にとってかわる基軸国もないなかでの争闘戦の激化は、激しい勢力図の再編として表れることになる。
米中貿易戦争は終わる要素がない。対中強硬派のナヴァロ大統領補佐官は、昨年夏のナヴァロレポートで「米国の技術的な資産に対する中国の攻撃は最も深刻な問題だ。AIもロボット工学といった最先端産業は雇用を生むだけではなく、どちらの国がこれらの軍事的強みを独占するかを決するからだ」と米帝の本音を言っており、この帝国主義としては正しい認識がトランプ政権の政策として前面に出ている。
(ナヴァロの著作。「米中開戦の時期が遅くなるほど米に不利になる」と結論づけている)
米国の対中関税引き上げの猶予=米中貿易戦争の休戦90日間が切れるのは3月1日で、進展がなければ米は2000億ドル分の中国製品の関税を10%から25%へ引き上げる。この恐るべき事態で、よりダメージを受けるのは米帝である。中国には発展途上の国内市場にまだ余地があるからだ。
中国は「米帝に今しかけられたら勝てない」という認識はあるだろうが、スターリン主義政権として延命するためには、「核心的利益」の実現による強国化達成を中国労働者階級との関係で放棄できない。そのためには、あくまでも米帝と対抗する軍事力・勢力圏をつくりだす方向に進まざるをえない。
このような米中激突の情勢は、朝鮮半島・東アジア情勢をさらに激動にたたきこむ。1.8~9の4度目の中朝会談には、「第2回米朝会談」が18年中には実現できず、いつになるか不透明となっている「危機」への北朝鮮・中国双方のあせりが表れているだろう。
米は北朝鮮の非核化が不十分だとしており、北朝鮮は先行的に核施設を廃棄しているのに、米が相応の対応をしてくれないと反発し、「非核化」は行き詰っている。そもそも「完全な非核化」には「核技術者の国外追放」すら条件となっており、基本的に飲めない条件だ。米の侵略戦争の口実のための手続きですらある。プロセスが進むと同時にどこかで米が妥協するならまだしも、米中貿易戦争の一段の激化に完全に規定されて不可能となっている。
こうした情勢で、キムジョンウンのソウル訪問もできなくなっている。韓国・ムンジェインもまたこの膠着状態に危機をふかめ、今回の中朝会談にとびつき、「中国の役割」を「高く評価」しているが、これがますます日米韓に亀裂を入れることになる。
(2)争闘戦からはじきだされた日帝・安倍政権のあがきは凶暴化する
労働者階級の闘いによって今なお敗戦帝国主義としての制約にあえぐ日帝は、外交上の手が打てず、独自の軍事国家化に突き進み、そのために愛国主義と排外主義を拠り所としようとしている。
海自哨戒機への韓国駆逐艦からの火器管制レーダー照射事件は、韓国海軍の遭難救助行動に対して、爆弾搭載と爆撃可能な海自の最新鋭哨戒機が、挑発的に低空飛行を行ったことが発端である。「低空飛行ではない」という根拠は民間飛行機の基準であり、ごまかしである。
対中国の緊張が高まっているときに、安倍が先頭にたって証拠動画を公開させ、「友軍」である韓国軍との軋轢を辞さない挙に及んでいるのは異常といわざるをえず、どれほど日帝が愛国主義の醸成に必死になっているかが示されている。
この戦争挑発の直接的動機は「徴用工」問題であろう。
韓国大法院による、新日鉄住金への「徴用工」への賠償命令判決の確定・韓国国内にある資産の差し押さえ決定は、戦後70数年にわたって、徴用動員=戦争動員で言語に絶する搾取と弾圧をうけた韓国労働者に日帝が日韓請求権協定をたてに謝罪を含めて、一切なにもしてこなかったことが背景にある。
※そもそも日韓請求権協定の条文には植民地支配の謝罪はいっさいない。歴史の清算を「棚上げ」にしたまま、大日本帝国が育成したパク軍事政権の下、請求権について「完全かつ最終的に解決された」とペテン的言質をひきだしたのだ。さらに日韓請求権協定は、韓国軍の軍事的派兵を日帝が経済的にさえる体制づくりであり、ベトナム戦争の後方支援体制だった。
沖縄に対しては、ますますタガが外れた圧殺をしかけている。辺野古移転をめぐって1・6NHKで安倍は「土砂の投入にあたって、あそこのサンゴを移している」と大嘘をついた。実際に沖縄防衛局が移植したのは土砂投入区域外の絶滅危惧種のオキナワハマサンゴわずか9群体のみで、必要とされる約7万4000群体には手もついていない。この「火消し」に躍起とならざるをえない事態に陥っている。強権は当然ながら、さまざまな方面に「隙」を生じさせるものだ。環境保護のテーマも一体となってますます基地建設反対の闘いを高揚させることはできる。その可能性は芸能人らのやむにやまれぬ決起にも示されている。基地建設をめぐる攻防の最大焦点となる2・24沖縄県民投票に対しては、すさまじい分断攻撃がかけられ、総力戦でめまぐるしい攻防が行われている。
安倍は、どんなに破綻しようが、凶暴な手も辞さず今通常国会に改憲発議をしようと狙ってくるだろう。すでに通常国会の提出法案を「60法案」と異例の少なさに絞るとしている。通常国会(1・28~)において、19年度予算案の審議が始まる2月中旬ごろから憲法審議会を開いて自民党の4項目の改憲案を国会に提出することを狙っている。
だが上述のサンゴをめぐる問題でもそうだが、早くも危機は爆発している。
JOC会長・竹田恒和の贈収賄は、20年東京オリンピックの不正を決定的にあらわとした。そもそも16年リオオリンピックと20年東京オリンピックは、ひとつながりの不正だ。すでにリオの収賄で、元国際陸連会長ラミン・ディアクと息子、さらにリオの五輪担当者の罪状も確定している。招致過程をめぐって物議がかもされていたように、JOCに贈収賄があることは確実だった。竹田は天皇一族であり、安倍らはこの竹田をかつぎ、電通に招致を丸投げして莫大な不正資金を投入していた。オリンピックは、もはや新自由主義者どもによる国家犯罪イベントである。
招致の出発点から、安倍の「アンダーコントロール」という大嘘で始まったのだ!
厚労省の「毎月勤労統計」のデタラメな調査も発覚した。
この統計を基に給付水準が決まる雇用保険と労災保険の給付額が、本来より少なかった人が延べ約2千人いて、その過少支給の総額は数百億円にのぼる、という。
厚労省は、「働き方改革」法案においても裁量労働制をめぐってデタラメなデータをねつ造していた。また、昨年6月の現金給与総額が前年同月比3.3%上昇となったことについても、大企業の割合を増やすデタラメなすりかえによるものだった。職場生産点における階級的労働運動の推進を徹底的にかちとっていくことが重要である。特に、今年は「働き方改革」法の本格適用へ各職場で就業規則が変わるなどさまざまな矛盾が噴出す年になる。
革命情勢は、客観的にはある。問題は、それを組織して形にするわれわれの力量不足である。