「民衆の実力行動で社会変えよう」(東京大学支部『決戦』)
民衆の実力行動で社会変えよう
新自由主義を打倒し、私たちの力で新しい社会を作ろう!
(2019.07.01 MSL東京大学支部)
参議院選挙の投票を7月21日に控え、各党はいっせいに選挙戦に突入している。しかし重要なことは、社会を変える本源的な力は選挙そのものにあるのではなく、学生や労働者—民衆の実力行動(ストライキ、デモ、暴動、占拠)にあるということだ。私たちの持つ潜在的な力は大きい。それを曖昧にし、民衆の力を「選挙時の一票」に切り縮める野党各党を乗り越えよう。いまこそ学生・労働者はストライキで安倍政権を倒し、社会を変えよう! 私たち民衆の実力行動で、資本主義社会(就職しなければ餓死し、就職しても過労死や貧困を強制される社会)を乗り越え、人間が人間らしく生きられる社会を作ろう。 (文責:みんくるファン)
「改憲」掲げる安倍・自民党
安倍首相は6月25日の記者会見や30日のネット討論の場で、「憲法のあるべき姿について議論をするのか、しないのかを問うのが、この参院選だ」と繰り返し訴えた。自民党はすでに昨年3月の党大会において、「改憲4項目」を決定し、それを改憲案の基本に据えるとしている。
「改憲4項目」とは、①憲法9条を事実上骨抜きにし、軍備保持と交戦権を認める、②緊急事態条項の導入、すなわち内閣が緊急事態を宣言した場合、内閣が法律制定権を持つ、③参議院「合区」解消、④「教育支援」に名を借りた大学教育等への政府の介入強化の4点だ。もともと、安倍・自民党には「96条の改正要件を緩和する改憲をまずやり、改正要件が緩和された後に『本丸』の改憲をする」という二段階のプランがあった。だがそれは、あまりの「ズルさ」に学者や民衆から猛反発をくらい、あえなく撤回された。「それならば」と作り出されたのが、この「改憲4項目」である。
安倍・自民党は参議院選挙を乗り切り「改憲勢力」で議席の3分の2を維持した上で、「改憲4項目」を軸とする改憲を衆議院の任期満了=2021年9月までに実施しようとしている。そもそも安倍首相は17年5月時点で「2020年新憲法施行」を宣言していた。ところが、スケジュールありきの改憲策動に労働者の怒りが爆発。昨年秋の臨時国会における改憲発議を阻止することに成功した。さらに統計不正問題などの自滅も加わり、いったん改憲は遠のいた。だが、ここに来て改めて改憲を焦点化し、なんとしても改憲を強行しようとしている。
改憲の裏にあるのは日本資本主義の絶望状態
安倍首相がここまで改憲に固執するのはなぜか。安倍首相個人の国家主義的・復古主義的傾向や極右団体「日本会議」との強い結びつきがしばしば指摘され、これは一面において正しい。だが、安倍・自民党を改憲に駆り立てるものは、イデオロギー的問題にとどまらない。
安倍・自民党を改憲へ突き動かす最大の要因は、日本資本主義の絶望的危機だ。日本は中国にGDPで抜かれ(10年)、18年時点では2倍以上も差をつけられている。バブル崩壊後の20年間、先進諸国で唯一賃金水準が低下(マイナス9%)している。そのような中で、結婚も出産も考えられない青年層が膨大に出現し、社会の再生産すらできていない。これが日本資本主義の偽らざる現実だ。
世界的に見れば、中国バブルの爆発=全世界的恐慌は目前に迫り、戦後世界体制の大再編が米中貿易戦争として表面化している。東アジア各国の成長は著しく、日本はすでに技術立国の地位を失陥しつつある。
そのような中で、日本資本主義社会を牛耳る連中、すなわち経団連に巣食う大ブルジョア(金融資本家)、それと癒着した自民党などの政治家や官僚が日本資本主義延命の唯一の希望としているのが戦争である。
着々と進んできた戦争準備
日本を法的、技術的、軍備的、そしてイデオロギー的に「戦争する国」へと転換させ、その軍事力を背景にし、あるいは現実に行使して韓国や中国と対決する、東南アジアなどの日本が優位性を持つ市場を保持し続ける——これが改憲の最大の狙いだ。
法的な側面ではすでに、小泉政権下の有事法制整備、14年の特定機密保護法、15年の集団的自衛権合法化などで着々と戦争準備が進められてきた。その最終的な留め金を外すものとして、憲法に自衛隊を明記し、交戦権を認めるという自民党の改憲がある。
技術的な側面でいうと、例えば15年からは安全保障技術研究推進制度が開始され、防衛省から大学の軍事研究に研究費が支給されるようになっている。
自衛隊の軍備強化も著しく、ここ数年で見ても、いずも型ヘリ空母の通常空母への改修、巡航ミサイルの導入、ステルス戦闘機F35の導入、日本版海兵隊とも言われる水陸機動団の設立などが進められている。
イデオロギー的側面では、戦前のように「国のために死ぬことが美徳」=愛国心の煽動として、教育現場における日の丸・君が代の強制や「道徳」の教科化、授業内容への介入が起こっている。さらに、5月の天皇代替わりを最大限に利用して、万世一系や国民統合などの天皇神話を宣伝している。
労働者に死ねと命じる安倍・ブルジョアジー
戦争は兵士や民衆には塗炭の苦しみをもたらしても、それで政治的・経済的に得をする人がいるのも事実だ。あの太平洋戦争ですら、日本の財閥や権力者は得をした。いまこのときもアメリカ合衆国では、侵略先の住民と米軍兵士に厖大な犠牲を強いる中で、軍需産業は大金を稼ぎ、その金は政官界に流れ、「鉄の三角形」と呼ばれる鞏固な利権構造を構築している。大ブルジョアジーも権力者も、兵士や民衆のことなど歯牙にもかけない。もし、労働者への道徳心・倫理観が彼らにあれば、過労死など即刻なくなっている。
それゆえ、「外への侵略戦争と内への階級戦争は一体」(ヴラジーミル・レーニン)だ。権力者は自らの政治的・経済的利益を隠すために、あくまでも「国民全体のため」を理由にして戦争準備を進める。だから、「国民のため」の戦争準備と一体で、「国民のため」に労働者から一層搾取して経済的利益を上げようとするし、「国民のため」に民衆の自由を制限する。
いま進められている「働き方改革」はその象徴だ。過労死ラインの労働を合法化し、「非正規職をなくす」と称して名ばかり正社員を増加させ、正社員・非正規職の同一待遇の名の下に正社員の福利厚生を剥奪する動きが、あらゆる職場で起こっている。政府が掲げる「働き方改革」の目的の一つは「生産性の向上」であり、それは労働者を一層働かせて、一層儲けるという意味だ。日本の再生のために生産性向上!——こんな誰もが得をするようなことを言っているが、その内実は「もっと儲けたい」という大ブルジョアの貪欲さでしかない。(今までと同じ成果をこれまでより短い勤務時間で終えたからといって、その労働者が定時前に帰れるはずがない。空いた時間には別の仕事を振られるだけだ。)
戦争は民衆にとっては悲劇でも、権力者や大ブルジョアにとっては利益となる。だから、いつも戦争を煽動する連中は「国民全体のために」「国家が平和であるために」などと嘯く。そして、それに騙されて殺し殺されるのは民衆だ。
労働者民衆の実力行動を
だが重要なことは、戦争を実際に遂行するのも、大ブルジョアに莫大な利益を稼がせているのも、権力者を権力者たらしめているのも、労働者民衆だということだ。社会の本当の主人公は労働者民衆だ。彼らを養い支えているのは、他ならぬ私たち自身だ。
だからこそ、私たちが叛乱を起こせば彼らの支配は途端に崩壊する。「1%」の大ブルジョア・権力者が「99%」の民衆を支配するための道具が、警察などの暴力装置であり、「秩序」といった言葉や「法は万人のため」といった幻想だ。民衆が「秩序」と幻想を打ち破り実力行動に出るならば、権力者は譲歩するしかない。まさに、香港での街頭占拠が「逃亡犯引渡条例」撤回を実現し、フランス「黄色いベスト運動」の暴動が燃料税値上げを撤回させたように。
だが許しがたいことに、既成野党はすべて労働者民衆の実力行動に敵対している。民衆が自然発生的に警察の規制線を突破したとき、日本共産党を含む既成野党はそれまでの立場を一気に捨て、「法律を守れ」「警察に逆らうな」と運動鎮圧者としての立場へと転換する。彼らの思考性や立場は、あくまでも民衆の側にあるのではなく、権力者の側にあるのだ。本質的には彼らはせいぜい良くて「肉屋を支持する豚」でしかない。だから、既成野党はすべて労働者民衆を「選挙時の一票」としか見ないし、日本共産党は選挙に不利なことは「野党の統一を乱す」と非難するのである。
求められることは、このような既成野党を乗り越え、労働者民衆の立場に立ち切り、その実力に依拠して社会を変革することだ。香港やフランスに続き、労働者民衆の総決起を実現しよう。労働者は職場で、学生は大学で、新自由主義反対のストライキに蹶起しよう。他人に雇われ、雇い主の利益になる限りでしか生きていかない、労働が生活の必要上強制されるという資本主義社会を乗り越えよう。他人のために働くのではなく自分や社会全体のために働く社会、学問などの金儲けにならないことも価値あるものとして尊重される社会を私たちの手で作り上げよう。 ■