「今こそマルクス主義を学ぼう」(東京大学支部『決戦』)

今こそマルクス主義を学ぼう

矛盾だらけの資本主義を終わらせ、21世紀の現代革命を目指そう!

(2019.12.02 MSL東京大学支部)

 

貧困、格差、差別、戦争…文明が発達した今もなお、様々な問題が解消されることなく残っている。今の社会システムである資本主義のままで、こうした問題が解決できるのか疑問を感じる人もいるだろう。一世紀以上前から資本主義に警鐘を鳴らし、その終わりを説いた人物がいる。マルクスだ。マルクスは、資本主義社会を分析し、来るべき共産主義社会への展望を示した。マルクスの思想は、ソ連や中国といった圧政の正当化に使われたことで誤解している人も多いが、その分析は21世紀の現在でも通用する内容だ。ジェンダーや環境問題さえその射程に含んでいる。今こそマルクス主義を学ぼう。(文:セットプチフォッカ)

 

革命家としてのマルクス

経済や政治のイメージがあるマルクスだが、大学では哲学を学んでいた。卒業後は、『ライン新聞』という青年著述家たちの機関紙の編集者となる。『ライン新聞』の編集者として、マルクスは現実の問題にも心を寄せていった。中でも、マルクスの人生の大きな転機となったのが「木材窃盗取締法」だ。当時の農民は地域の森林に入り、落ちた枝を拾い、薪に使うことで生活を成り立たせていた。しかし、ドイツのライン州では、枯れ枝も森林を所有する地主の「財産」であり、枯れ枝を拾う行為を「窃盗」とする法律が地主らの意向で成立した。マルクスは、人間の命よりも地主の所有物である木材が尊重されることを紙面上で厳しく批判した。マルクスからすれば、「木材窃盗取締法」は財産と土地を所有する階級のために作られた法律であり、農民を搾取するだけでなく、犯罪者にまで仕立て上げるものであった。

こうした批判を受けた当局は、検閲を強め、最終的にマルクスは『ライン新聞』を去らざるを得なくなった。マルクスは、この出来事を機に、経済の知識をつけたいと考え、共産主義への関心を深めていく。そして、盟友エンゲルスとの出会いや様々な思想家のグループとの交流と論争を経て、自らが研究対象としていたヘーゲル、その弟子のフォイエルバッハの哲学さえも乗り越えていくようになる。マルクスの立場は、「哲学者たちは世界をさまざまに解釈してきたにすぎない。だが、大切なのは、世界を変革することである」(「フォイエルバッハに関するテーゼ」)という言葉に端的に示されている。その後、自らを共産主義者と宣言し、実際に社会変革へと踏み出していく。マルクスが革命家といわれる理由の一つはここにある。

 

『共産党宣言』にみるマルクスの思想

その後、マルクスは、共産主義者の国際的なネットワークとして「共産主義者同盟」を結成する。そして、その綱領にあたる文書『共産党宣言』を書き上げる。『共産党宣言』には、マルクスの思想のエッセンスが詰め込まれている。その要旨の一部分を紹介しよう。

「これまでのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である」第1章は、この有名な一節から始まる。いわゆる階級闘争史観である。「階級」とは、同一の政治的・経済的利害を持つ集団のことだ。例えば、古代の貴族と奴隷、中世の封建領主と農奴、そして近代でいえば資本家と労働者が代表的な階級である。両者は常にどちらの階級が社会を支配するかを巡って、闘争を繰り広げてきた。王政を倒し、議会制民主主義が採用された、今の資本主義社会は、階級による支配のない誰もが自由に暮らせる社会のようにも見える。しかし、マルクスはこれも階級社会の一つの形態であると捉える。資本主義社会とは、生産手段(原料、土地、工場など)を所有する資本家が、それらを持たない労働者を搾取・支配する社会だ。労働者にとって、生きていくためには資本家に雇われる以外の道はない。このことを利用して、資本家は労働者を低賃金で雇って、自分の富を増やしていく。こうして、労働者は資本家のために働かされ、資本家はますます富んでいく。『共産党宣言』が念頭に置いているのは、産業革命以降のヨーロッパの労働者階級の状態であるが、現代の日本にも通じる内容だ。ライフスタイルが多様化した現代でも、労働者の圧倒的多数にとって、働いて得た賃金は日々の生活に消えていき、その金で土地を所有したり、他人を雇ったりする資本家にはなれない。1848年に発表された『共産党宣言』だが、マルクスの考え方は今でも有効だ。むしろ、社会保障や国際協調が失われ、資本主義の本性がよりむき出しになりつつある今だからこそ、なおさら学ぶ価値があるといえるだろう。

『共産党宣言』では、“労働者階級は単なる無力な存在ではない”ことも強調されている。実際に社会を動かしているのは、労働者であり、労働者が一斉にストライキをすれば資本家はたちまち困り果ててしまう。それどころか、革命を起こして、労働者が社会の主人公となる新たな社会を作っていくことも出来る。労働者階級は賃金に繋ぎ止められた無力な存在にも見えるが、実は資本家の支配を覆すことが出来る革命的な階級だ。だからこそ、資本家は労働者を互いに競わせたり、道徳や法によって自らのイデオロギーを労働者に刷り込んだりすることで、労働者の団結を破壊しようとしてきた。マルクスは、こうした闘争の歴史的分析から、労働者の団結の重要性を説き、「万国の労働者、団結せよ」という有名な言葉を『共産党宣言』の末尾に記した。『共産党宣言』には、他にも共産主義に対するよくある批判への回答、共産主義者とは何か、他の共産主義との違いなど様々な論点が網羅されている。

 

マルクス主義の広がり

また、マルクスの思想は、現代の社会問題にも適用できる。例えば、ジェンダーの分野では、古くは「社会主義婦人解放論」から現在の「マルクス主義フェミニズム」までマルクス主義が影響を与えてきた。ジェンダーと階級の視点を組み合わせることで、性差別の複合的要因を明らかにできる。「女性活躍」といっても、現在の資本主義社会の抜本的変革がなければ、育児や家事といった女性に押し付けられた従来の搾取に加えて、労働者としても搾取される二重の搾取状態に置かれてしまうだけだ。マルクス主義は、資本家の美辞麗句に騙されない思考力も養ってくれる。

最近では、マルクスのエコロジー思想にも注目が集まっている。“気候変動は資本主義の代償であり、抗議の声をあげる世界中の若者たちは「資本主義」という経済システム自体の変革を求めている”と論じるマルクス研究者もいる。(「再びマルクスに学ぶ」朝日新聞2019年10月30日付朝刊)

マルクス主義とは、マルクスを崇拝することでもなければ、ユートピア的な未来社会を夢想することでもない。大切なのは、歴史と経験に学び、理論と実践の両面を深めていくことだ。その意味で、哲学者であり、革命家でもあったマルクスの思想は、大いに参考になるだろう。今のような資本主義でも、ソ連や中国のようなエセ社会主義でもない、搾取と差別と戦争のない世の中を作っていくのは、21世紀に生きる私たち自身だ。

日常の中でなんとなく感じている資本主義に対する不満・怒りを、マルクス主義の学習を通じて、行動に変えていこう。共にマルクスを学び、議論しよう。春休みに開催される理論合宿に集まり、マルクス主義者としての第一歩を踏み出そう。 ■

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