【19年1月21日時点】情勢解説

(1)1.28の通常国会は、18年過程をこえる安倍政権への怒りで包囲されている。

1.28通常国会の開催で、参院選は7.4公示、7.21投開票となる。閉会日は6.26で、6.28~29にG20(大阪)がある。衆参同日選については、TV番組で自民党選挙対策本部長・甘利明が「参院選が非常に厳しい状況になった場合、突破する手立てとしてあることはある」と言明している。
日を追うごとに安倍への怒りが高まっている。1.16付「高知新聞」の世論調査では、安倍内閣の支持率はなんと26.8%、不支持率は倍の49.7%であった。昨年10月末の「日本農業新聞」でも、支持率は37.3%である。地方の怒り、農民の離反は、相当深まっている。
この階級支配の危機は、安倍政権の改憲への早期強行への衝動を高めるだろうが、そこから生まれる「拙速」さは新たな闘いの条件になる。

(2)沖縄の怒りは安倍政権への怒りの最先頭であり、非和解的である。

2.24県民投票へ、政権中枢の圧殺策動が起きている。5市(36万3069人、全体の31.66%)の市長が反対を表明。これを組織したのは、沖縄2区で照屋寛徳氏に敗れ自民議員の死去でやっとくりあげ当選した衆院議員・宮崎政久。安倍らの先兵となり否決をうながす地方議員の勉強会を開き、趣旨から外れた地方自治法の悪用を「指南」した。実際には政権中枢のトップダウンではないか。

県民投票は、9万筆以上の県民署名をもとに決定した経過から中止はない。「投票の自由」すら奪うあり方に、5市の地元から怒りと弾劾は高まっている。すさまじい暴力性反革命性への激しい怒りの爆発はゼネストへと発展する要素になる。

 

(3)基準統計すら改ざんしてきた国家犯罪が暴露された

04年以来、厚労省の「毎月勤労統計」をはじめ、国の56規模の「基準統計」が捏造されていた。全ての「基幹統計」の点検・見直しが必要になっており、それも18年1月には判明していたことを隠蔽していた。12月に総務省が調査方法の誤りやデータの補正を指摘したが、公表まで1ヶ月もかかっていた。
とくに「毎月勤労統計」は雇用保険や労災保険に直結しており、のべ1973万人(雇用保険は1942万人)におよぶ、労働者が最も苦しいときのための給付に関わるデータだ。このデータで調査対象事業所を1/3にきり縮めた平均給与をでっちあげていた。さらに、これら不正な調査結果をめぐる資料が、書類の保存期間が過ぎたということで04~11年分を一部紛失・廃棄してしまっている。1千万人以上の住所がわからない、万一住所が特定できても、システム改修がないと追加給付の金額精査ができないという惨状だ。

この問題は「15年近く放置されていた」ことがまず大問題ではあるのだが(民主党政権でも続いていたということも重要)、重大なのは、第1次から2次にまたいで安倍政権下で決定的に増幅された、ということである。アベノミクスに関するデータ、「働き方改革」に関するデータ、入管法改悪に関するデータの捏造や隠蔽等々。国家犯罪を政権維持の道具にする政権なのである。

 

(4)オリンピックをめぐる国家犯罪も暴露された。帝国主義の一大イベントも危機に追い込まれる

安倍への怒りの高まりゆえに、新天皇即位~2020年オリンピックによる「国威発揚」キャンペーンの大洪水によって、改憲発議―「2020年新憲法施行」を強行しようとしている。だがオリンピックそのものが危機に陥ろうとしている。
JOC竹田恒和会長のオリンピック招致疑惑・贈賄容疑は、すでに3年前から進行し、リオとまったく同じ額(2億3千万円)のワイロで、同じシンガポールのコンサルタント会社「ブラックタイデイング」の口座を使い、まったく同じ人物の国際陸連・IOC有力理事のラミン・ディアク(親子)に渡された。国際陸連の本部はモナコにあり、モナコの捜査権を持っているフランス検察が追及しているのだ。

一部保守派が主張するように、ゴーン事件の「意趣返し」だというのは論点すりかえである。日本国内では第三者委の担当者(JOC常務理事や都庁幹部がオブザーバー)たちがもみ消してきたことで焦点にならなかっただけである。
1・15竹田会見は質問を一切受け付けず、7分で切り上げるというもの。国会への参考人招致にする方向で物事は進展している。
安倍政権の「2020新憲法施行」を根底から吹き飛ばす情勢のなか、通常国会が始まるのだ。

 

(5)19年決戦の冒頭から、日本ー世界の労働者階級の決起が開始されている。

1・14(日本時間1・15午前1時)から、UTLAのストライキは、ロサンゼルスを埋め尽くす教育労働者、保護者、子供たちの決起で歴史的大闘争になっている。 「ロサンゼルスは、公教育を守ろうと公立学校へのきちんとした再投資を求める人であふれかえっています。そう宣言する、あるいは公教育やその教師たちを支持する姿を見せるだけではだめで、私たちの学校を兵糧攻めにして民営化しようとしているベアットナー(教育長)の政策に対して痛烈な非難をぶつけなくてはならない」という訴えが新聞紙上にも掲載された。

読売では「ロサンゼルスで、公立学校の教職員約3万人か、待遇改善を求め、1989年以来30年ぶりにストライキ」「今月14日に始まったストは5日目に入っても収束は見通せず・・」「教職員らは連日、学校周辺や市街地などでデモ行進や集会を続けている」と報じている。さらに1.20には、就任2年のトランプ弾劾のデモが、全米各地、全世界でまきおこっている。

フランス・マクロン政権にたいする「黄色いベスト運動」は2019年に入って「土曜行動」は、第十次をむかえた。
さらに欧州全土に反政府デモが拡大している。スペイン(バスク地方)での反政府デモ、イタリアの移民・難民歓迎デモの展開・・。ハンガリーでは、労働法制改悪に「奴隷法反対」を叫んで大規模デモが爆発している。ポーランドなども右翼政権の反移民・難民政策に対する反政府運動・・。なによりも韓国での極寒をつらぬく民主労総の連日の闘いがある。1.19~20のテグでの星野絵画展、記者会見も盛況となった。国際連帯の可能性はさらに広がる。

日本では、昨年11月の特区連闘争に次ぐ、12月練馬図書館の図書館専門員労組の「ストライキを対置」しての指定管理者制度粉砕の闘い。さらに1・8から「私学教員ユニオン」の正則学園でのストライキ(教育労働者20人決起)が闘われている。
1・16「築地を活かし、豊洲を止める」総決起集会は、宮原洋志さん(仲卸、明藤商店)の基調をはじめとして、絶対反対派の団結をうち固めた。事故や原因不明の体調不良の続発のなか、宮原さんは「まだまだ何が起こるかわかりません。たとえそこで働かなくてはならない状況に置かれても、こんな悪辣な豊洲移転をみすみす見過ごすことはできません。まだまだ多くの仲卸の人が、裁判の継続をはじめ、闘いの希望を見出そうとしています。その日まで闘い続けましょう」と訴えている。1・14「都政を革新する会」新春の集いへの155人の結集、特に杉並区民のかつてない結集もまたこれらの情勢の一環だ。

 

(6)英・米の国内支配の崩壊

上記、欧州をめぐる新たな階級闘争のうねりをふまえ、英EU離脱案の議会での大差の否決をどうみるか。
与党保守党から、118人もの造反。協定案は、離脱後の混乱回避で英をEUの関税ルールに一定期間縛ることへの反発といわれる。英メイ政権は3.29離脱日が迫り、このままいけば「合意なき離脱」においこまれる。離脱合意案の破棄の上でEUとの再交渉や、国民投票の再実施は、不可能だ。

①英帝国主義の歴史的な階級支配の崩壊

このEU離脱を、移民問題などへの排外主義・国家主義的な「ポピュリズム」の台頭とみるのは、まったく一面的だ。そもそもEU離脱キャンペーンの核であった右翼政党UKIPは離脱後の総選挙では総崩壊している。それは「EU離脱」として表れた英の新自由主義への労働者階級の反乱が階級的本質である。

②サッチャー以来の民営化・労働組合解体を軸とする新自由主義的な労働者支配の延命策が、完全に破綻したということ
※アイルランド問題という民族分断、階級分断の破綻も重大である。

③戦後世界体制・新自由主義の崩壊のなか、EU・ユーロの解体が激しく進行していること

EU・ユーロにのっかったサッチャーの「金融ビッグバン」による金融大国化が大破綻をむかえ、英シティは中国の「一帯一路構想」の「西のハブ(拠点)」になろうと動き出している。新自由主義の金融的搾取に怒る労働者階級の力が、金融的・経済的つながりを含めEUを解体させ、帝国主義の勢力再編を招いている。分裂とブロック化、世界戦争か世界革命かの時代であることを、このうえなく凝縮した出来事が「英EU離脱」の背景だ。

こうしたなかで、1.20トランプ就任2周年をむかえ、米帝はその没落・崩壊の突破をかけ、米中貿易戦争に深くのめりこむ。
だが、この外への貿易戦争・侵略戦争は、なによりも米帝国内の危機にはねかえる。トランプは、1.8のテレビ演説で、メキシコ国境からの不法移民流入で犯罪が増加し、なんと「人道上の危機」が起きていると「壁」建設を訴えた。だがこの「壁」建設の予算が通らず、政府機関の閉鎖が過去最長を更新しつつ、民主党との対立がドロ沼化してる。約80万人の連邦職員の無給が続き、国立公園は荒廃し、食品検査は停滞し、米社会の崩壊に拍車をかけている。1.29の一般教書が発表できないとすら言われている状況だ。
トランプ政権にとっては、それゆえに「危機」こそが延命の死活をかけた政策となっている。大軍拡と戦争政策に拍車がかかり、トランプは、1.17にミサイル防衛の中長期指針となる戦略文書「ミサイル防衛見直し(MDR)」を発表。中露の超音速兵器への対抗として、宇宙空間でのミサイル防衛強化など無制限の軍拡構想をだしている。
2月下旬の米中首脳会談の合意すら、展望がなくとも、トランプの「数少ない成果」としてうちだしている。

 

(7)「敗戦帝国主義」としての制約を突きつけられる日本帝国主義

日米帝が戦後革命の圧殺と引き換えにした、労働者階級への大幅な譲歩と妥協の最大の柱こそ戦後憲法、とりわけ憲法9条であり、今なお日帝の最大の破綻点は、この憲法をめぐる戦後の労働者支配と安保―沖縄問題である。

「北方領土」問題で、日露外相会談では戦中・戦後の「第2次大戦の結果」の「歴史認識」が問題となっている。ロシアは「北方領土」という呼び方にすら抗議している。やり合い自体は大国間の争闘戦にすぎないが、この背景には戦後秩序ー「国際社会」において日本帝国主義がどのような状況に置かれてきたかを示している。

露外相ラブロフは「南クリル島(北方領土)の主権はロシアに移ったという基本的立場を、日本が認めることなしに交渉の前進は厳しい」と主張。56年宣言をめぐる「解釈」も含めて、安倍政権は戦後レジームをひっくり返すため、戦争国家化が対米対抗性を持っても、「独自的」推進を図ろうとするだろう。同時にそれが労働者支配の根底をゆさぶっていくことになる。改憲に対する怒りの大きさ、いまだ過半数の賛成に至らない日本の世論はそれをよく示している。

火器管制レーダー問題では「日本が一部情報を示す」代わりに、韓国駆逐艦の「全レーダー情報」を求める「非常に無礼な要求」をした、と韓国国防省報道官が批判。ついに日本側から交渉を打ち切った。「元徴用工訴訟」をめぐっては、安倍政権が韓国政府に日韓請求権協定にもとづく協議を求め、回答期限を「30日以内にしろ」と設定。韓国政府は当然にも拒否した。そもそもブルジョア法の範囲からいっても、裁判所の判断に行政が介入することを当然とするあり方は通らない。戦前からそのまま制度・人格を引き継いだ司法の腐敗を頼みとしてきた日帝は大国間の争闘戦では通用しないのだ。しかしそうやって、排外主義・愛国主義と「自衛戦争」論を鼓吹しなければ、労働者支配が崩壊する恐怖があるのである。

 

(8)日帝ブルジョアジー自身の戦略が破綻している

日本経団連会長・日立会長の中西宏明は、3.11後に停止している原発について「再稼働はどんどんやるべきだ」と言い放っている。他方で1.17に日立は、英国での原発建設計画を凍結すると発表し、そのため19年3月期に3千億円の損失を計上する。
日帝が、「成長戦略」として推進してきた原発輸出はすべて頓挫した。鉄道輸出もまったく思うようにいっていない。戦後日本帝国主義は、音をたてて崩壊している。
日帝は、軍事産業と大軍拡に突き進まざるをえない。米軍空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)の移転先を提供するため、地権者に払う額を4倍近くにまで引き上げて鹿児島県の馬毛島を買収しようとしている。これは横須賀を母港とする空母「ロナルド・レーガン」の艦載機訓練に使うとしている。これはいずれ、「いずも型」護衛艦の空母化にともなった訓練場になるだろう。さらには普天間基地のオスプレイの訓練にも使用しようとしている。

これらは同時に、労働者階級への階級戦争を激化させる。
関西生コンへの「共謀罪」的な労組破壊、そしてJRの動労千葉・動労水戸・動労総連合への、これまでの延長ではない「労働監獄」的な労組破壊攻撃についてはいうまでもなく。

今年は、経営労働政策委員会報告(経労委報告)で、「官製春闘」=政府要請による賃上げをやめる方針をうちだし、「自社の収益にみあった」賃金決定とするとしている。まさに春闘の絶滅である。また、「働きがいを高める働き方改革」の「処遇改善」で「生産性を向上させる必要がある」と、改めてその狙いは「労働時間の削減」などではないということをハッキリさせている。

年内に提出する国家公務員法や給与法の改定などの関連法案においても、国家公務員の定年を60歳から65歳に延長することに伴い、

①60歳以上の給与水準を7割にする

②60歳未満の賃金カーブを抑制する

③60歳以上の職員に短時間勤務を導入する

④60歳で原則管理職から外す制度を導入する

と打ち出されている。これはすでに民間で広く行われている「シニア制度」など労働者の非正規雇用化・賃下げを促すもので、能力主義賃金へのさらなる転換だ。国家公務員への適用という形による、戦後雇用制度・賃金制度のいまひとつの総絶滅攻撃である。さらに年金制度をはじめとする戦後社会保障の解体でもある。

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