【2月11日】情勢解説

(1)統一地方選挙―参院議員選挙過程は改憲をめぐって国論を分岐する過程になっていく

2月10日の自民党大会で、安倍首相は「まなじりを決して統一地方選と参院選を戦いぬく」「いよいよ立党以来の悲願である憲法改正に取り組むときがきた」と述べた。
また、2月9日の自民党憲法改正推進本部では、下村本部長が各都道府県連の担当責任者50人を集めて、「統一地方選挙も憲法改正に向けた大きなムード・流れになるようなことをお願いしたい」「街頭演説や集会などで憲法改正を積極的に取り上げるように呼びかけ・・・野党が国会での議論を拒めない雰囲気をつくる」と訴えている(2月10日読売新聞)。下村自身の全国での講演、ネットでの番組配信、党大会後に全国289(小選挙区)に改憲推進本部を設置するなどの具体的取り組みもあわせて発表されている。
日本維新の会も党大会で、「国会で改憲論議を主導する姿勢」をうちだしている。
統一地方選と参院選の準備期間も合わせた2~7月過程は、改憲への運動期間として与党自身も捉えている。


この間の選挙における、経済分野などに焦点を合わせて改憲を焦点化させない方法は、今回ついに使わないということになる。より全面的な動と反動の激突になるということだ。

 

(2)労働運動の活発化が反撃の焦点。連帯関西生コン支部への弾圧は時代との激突だ

こうした情勢の真只中で、2月4日、沖縄地区港湾労働組合協議会(沖縄地区港湾)が那覇港や中城港湾で無期限ストライキを宣言した。沖縄地区港湾は、自衛隊の貨物や車両を取り扱う船舶の民間港利用を制限するよう県に要請していた。が、自衛隊車両200台近くの積み下ろしに当日の組合による視察が禁止された。これへの抗議のストライキだという。
那覇港は組合員が取り扱う貨物が8割を占め、物流全体に多大な影響力を持っている。ストライキ当日は11隻が入港できず、無期限ストライキは、県が事前協議等々に対応する旨が約束されて当日17時半には解除となった。これは「県民投票後」の闘いの姿の先取り・モデルケースとなりうる。

(2月4日、ストライキに突入した沖縄地区港湾労組の労働者たち)

連合結成30年、新自由主義の労働側の推進者が崩壊するなかで、日本の労働者階級にストライキの気運がおこっていることは極めて重要なことだ。

昨年後半から今年冒頭にかけ、特別区(23区)の自治体労働者による人勧大幅賃下げ勧告に反対する辞事情のストライキ、練馬図書館司書のスト宣言、私立正則学園や京華学園のストライキ、京成バスストライキ、福岡図書館司書のストライキが取り組まれ、いずれも高い注目を浴びた。これらが沖縄のゼネスト情勢と相互に高めあうものになっていく可能性は十分にあるだろう。
米UTLAストライキの大勝利もまた、労働運動に真剣に取り組もうとする新たな活動家たちを激励する。確実に時代は闘争の時代へ入っていく。

そうであるからこそ、新自由主義と立ち向かって生き残った強力な階級意識を持つ労働運動を叩きつぶすことが安倍政権・資本家階級の生命線となる。連帯関西生コンへの2月5日の15名逮捕はその象徴的な事態である。全学連などの階級性を掲げる運動体への弾圧も当然強まるだろう。だが、それらの団体は歴史の試練に耐え、最後まで労働者民衆の味方として裏切らず立ち続ける可能性を持った組織でもある。ジグザクはあれど、真剣な努力を重ねれば、全学連や労組交流センターは歴史の前面にでていくことができるはずだ。

 

(3)通常国会は、政権自身の腐敗で早くも破産している

安倍政権は2012年以来、「アベノミクス」をスローガンとして2015年には「GDP600兆円」を掲げてきた。その「成長戦略」の一環として「統計改革の推進」が入っていたのだ。すでに2004年から新自由主義の本格的進展とともにはじまっていた基幹統計の偽造は促進されたのだ。
安倍は毎月勤労統計の「実質賃金の偽装」に対して「総雇用者所得は増えた」と開き直っている。総雇用者所得とは「1人あたり賃金×雇用者数」。年金で暮らしていけない高齢者がアルバイトなどに出ざるをえなくなれば当然「総雇用者所得」は増えるし、高い学費に苦しむ学生の数が増えても同様の現象は起きる。特に女性をはじめ高齢者や若者の非正規職化が進展しただけなのだ。それを誇らしげに語る安倍首相が、どれほど労働者階級の生活を理解していないかわかるだろう。
同時にはっきりしたことは、新自由主義の国家にとって「国民」の一体性の美名を守る唯一の方法が、一握りの国家中枢・資本家階級による大ウソでの支配しかないということだ。
この問題が特に厚労省に集中していることも象徴的だ。労基署ですら外注化・民営化が進もうとしているように、資本家階級は厚労省などなくなっても良いと本気で思っている。

 

(4)米「自国第一主義」の下で独自の軍事大国化をめざす日本帝国主義

米トランプは、政府閉鎖で延期されてきたが、「一般教書演説」をおこなった。そこでは、

①トランプは、INF条約(中距離核戦力全廃条約)の廃棄を通告したことをひけらかした。小型核弾頭の製造開始にも見られるように、これは昨年2月の「核体制の見直し(NPR)」の実行だ。

②第2次世界大戦で勝利した米帝の歴史をとりあげ、愛国主義を激しくあおった(この点では日露戦争時の明治天皇の短歌を引き合いにだした安倍首相の施政方針演説にも通ずる)。演説の約3割を「壁建設」に充てるなど、とにかく排外主義に力を割いている。没落する米帝・トランプにとって「壁建設」には支配のための大きな意義があるのだ。

③「米経済は世界の羨望の的となり、米軍は世界最強になった」と主張。だが、ついに成長率は1%台の「大不況」に突入しようとしており、特に財政赤字は8970億㌦にふくれあがり、「持続不可能」(FRBパウエル)と言われている。

④米中貿易戦争について「真の構造改革」という言い方をしている。5Gの軍事システムでの覇権・安全保障体制の覇権をめぐって「中国製造2025」をつぶすために戦争を辞さない意図は明白である(ファーウェイはまさしくこの焦点となる企業)。
実際、トランプは3月1日(米中貿易戦争再開日)までの米中首脳会談を蹴り、閣僚級会合までにとどめた。他方で、2月27~28日にベトナム・ハノイでの米朝会談を設定した。中朝会談はすでに4回も行われてきたが、米朝会談はストップしたままだった。この間米は「完全な非核化」についても一定の譲歩をみせ、北朝鮮の市場を狙って中国の影響を引き離そうとしている。逆にいえば、この企みがうまくいかなければ朝鮮半島への武力侵攻に、外交が戦争に切り替わる危機へと転化する。

トランプのINF条約からの脱退を安倍政権は真っ先に支持した。
ロシア・ラブロフ外相は、日本が米から導入する「イージス・アショア」について「攻撃にも使用でき、INF廃棄条約違反だ」と非難している。INF条約廃棄に関しても「クリール諸島(北方領土)の問題とつながりがある。米のミサイル防衛システムの配備は、日露間の安全保障問題」と延べている。米帝の戦争政策が安倍のロシア外交を破産に追い込んだのだ。帝国主義間の争闘戦は激しさを増し続けている。
安倍政権は1月29日の参院本会議で、核兵器禁止条約への参加について改めて日本政府として参加しないと表明した。そして「わが国に対する核の脅威がある中、抑止力を維持し、国民の生命・財産をも守り抜く責任がある」と核兵器禁止条約を全面的に支持しないとした。東海第二原発の再稼働への強行姿勢と一体で、米帝に依存しない独自の軍事大国化・核武装化の動きも進んでいる。

 

(5)米中貿易戦争に挟まれ、戦争国家化への衝動を強める日本帝国主義

中国の景気減速(18年GDPは6.6%増で28年ぶりの低い水準)は、日本を直撃している。上場企業の2019年3月期決算は、純利益の合計が3年ぶりに前年を、1兆円ほど下回る見通しとなった。1部上場の121社が下方修正。米中貿易戦争は、特に電機・電子部品、機械、自動車に打撃を与えている。減益は軒並みで、日本電産をはじめ、パナソニック、三菱電機、ニコン、ソニー、TDK、シャープ、東芝等々、さらにトヨタ系自動車部品大手、マツダ、ホンダ等々・・・。米の対日貿易赤字解消策はときに日本の独占資本に対する締め出しのような形もとってきたが、そのなかで中国市場への投資を増やしてきた大企業も多かった。今、そこすら大打撃となったのだ。

日帝は敗戦帝国主義としての制約(=9条を核とする現憲法体制)にうめかざるをえない。当面は安保戦争法=集団的自衛権行使に依拠するとしても、早急に日帝独自の軍事大国化・核武装化に突き進むしか「国益」を守る道はない。そのために改憲を進め、軍事を整備する道として、日韓関係をめぐる排外主義・愛国主義のキャンペーンは激化している。「レーダー照射事件」や「韓国国会議員による天皇への謝罪要請」をめぐる対応などはきわめて転換的に行われていると思われる。
昨年12月閣議決定の「防衛計画の大綱」では、日本が安全保障協力を推進する対象として、韓国は米国、豪州、インド、東南アジアに次ぐ5番目。前の大綱(14年12月)では米に次ぐ2番目だった。明白に「友好国」にする気がもはやない。朝鮮人民の怒りを排外主義のキャンペーンにするつもりだろう。だがそれは当然にも、中国市場や東アジアのフロンティアとなろうとしている北朝鮮市場から排除されるものとなる。どちらにせよ日本帝国主義に未来はない。

 

(6)改憲・戦争政策との最大の激突点=沖縄は全島ゼネスト情勢に火が点いた

辺野古基地建設は大破綻している。すでに14年にわかっていた軟弱地盤の存在を安倍政権はひた隠しにしてきた。そうやって凶暴に反対運動つぶしを展開してきたが、そのことが安倍政権自身を追い込んだ。人民の不屈の決起が敵の焦りを生み出し、重大な情勢を切り開いたのだ。

辺野古の工期は13年以上延び、費用も5000億円から約2兆5500億円と莫大になる。湯水のように注ぎ込まれる血税は怒りのきっかけになる。この海域は、最も保全する必要がある「ランクⅠ」に指定されており、ここを破壊することはより広い怒りに火をつけることになっていく。
2・24県民投票をめぐる激しい攻防がつづくなか、上述したとおり港湾労組のストライキが起きたのだ。全島ゼネスト情勢はさらに進展する。

(7)「働き方改革」の最先端・JR『変革2027』との対決

『変革2027』は「『鉄道を起点としたサービスの提供』から『ヒトを起点とした価値・サービスの創造』への転換」だとJR東は述べている。それは鉄道事業からの脱却として、全面分社化と労働者への転籍強要・総非正規職化へむかうものである。ここで展開されている「マチナカ」ビジネスとは従来の「エキナカ」で行われてきたように、乗降者数の多い駅での駅ビル建設をこえ、駅を中心とした再開発事業そのものだ。今、杉並で焦点となっている阿佐ヶ谷などの再開発問題は鉄道労働運動の課題でもある。職場では、さらなる合理化・人員削減のために次のことが狙われている。
①3月ダイヤ改定を機に乗務員勤務制度改悪が強行される。
②就業規則の改革案、テレワーク導入・コアタイムなきフレックスタイム制導入
③自動運転による列車の無人運転化、乗務員をなくす。
④『電気部門の変革2022』による設備部門はじめ全面的な外注化。駅部門では、吉祥寺に続く3月秋葉原の外注化。
⑤「新幹線業務の変革」と称した新幹線・在来線の分離と、在来線の大幅切り捨て。

 

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